手のひら多汗症を手術する前に!病院選びとカウンセリングの大切さ

今から10年前、23歳の頃に手掌多汗症を克服すべくETS手術を受けた多汗症ラボ管理人です。

あの頃は「ただとにかく手汗を止めたいんだ」という一心で、特に病院選びをしたわけでもなければ、手術前に何度もカウンセリングを受けたわけでもありません。

たまたま近くの大きな病院がETS手術を行っていたので、そこで受診することに何の疑いもありませんでしたし、手術を受ける前まで副作用(代償性発汗)の存在すら知りませんでした。

何が言いたいかというと、私は「たまたま近くにあった病院しか受診しておらず、自分自身が手掌多汗症とETS手術について無知な状態で安易に手術を受けた」ということです。

当時を振り返ると「なんて馬鹿なことをしたんだろう」と悔やみますが、ETS手術で切除した神経は基本的には二度と繋がらないので、安易な判断で受けた手術によって発症した代償性発汗という副作用と、私は今後一生付き合っていかなくてはならなくなりました。

10年前は今と違って、スマホで簡単に何でも調べることができる世の中ではありませんでしたので、当時の私には必要な情報が不足していたんだと思います。

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ETS手術前に実際に受けた説明

胸腔鏡下交換神経遮断術(ETS手術)を受けるにあたり、病院で簡単な説明を受けました。

これが俗に言うカウンセリングだと思うのですが、10年経って多汗症に対して多少知識を得た今だから分かるのですが、その当時の私が受けた説明は、本当に簡単なのもでした。

これは私がETS手術を受ける前に病院(お医者さん)から実際に渡された、「手掌多汗症の治療」という題名がついた資料です。

見てお分かりの通り、A4サイズのコピー用紙がたったの3枚です。

内容の説明にもそんなに時間は掛かってなかったと思います。

当時はこれが普通なんだと当然のように受け入れましたが、今になって色々と調べてみると、現在ETS手術を含めた多汗症の治療に真剣に取り組んでいる良い病院では、治療前のカウンセリングを最重要視して、丁寧に時間をかけて行うそうですね。

今さら後悔しても元の体に戻るわけではないので、これから手のひら多汗症の治療に挑む方の参考のために、当時の私が手術前に実際に渡された資料の内容を書きたいと思います。

手掌多汗症

まずはじめに「手掌多汗症とは」ということが簡単に書いてあります。

精神的興奮や感情的刺激(緊張)によって、両手のひらの過剰発汗を来す疾患。多くは腋の下や足底部の多汗を伴う。患者は10~30代に多く、女性にやや多い。家族歴がある(家族、親戚に手掌多汗症の人がいる)。

手術適応について

ここでは「どんな人が手術を受けるべきか」が書いてあるようです。

病歴と手掌の発汗の所見から、日常生活、職業生活に病的な支障を来していると思われるもので、患者が手術を強く希望するとき、手術適応となる。手掌正常で、腋の下や足底の過剰発汗に対する手術は適応にならない。絶対適応はなく、全て相対適応であること、術後「代償性発汗」が程度の差はあるが、ほとんどのケースで生じるので、インフォームドコンセントが重要である。

なるほど、手のひらに病的に汗をかく人が手術を強く希望する場合にETS手術は適応されて、その他の箇所の汗については適応外ということですね。

ただ、お気付きの方も多いでしょうが、これは患者に説明する為に作られた文章ではありませんね、専門用語が多過ぎます。

どこかのお医者さんが研修して発表したものから引用(コピペ)して作ったんでしょう。

インフォームドコンセントなんて、一体どんなタイミングで使う言葉なんでしょうね。

インフォームド・コンセント(英: informed consent)とは、「正しい情報を得た(伝えられた)上での合意」を意味する概念。

引用元:ウィキペディア

手掌多汗症の重要度分類

以前書いた記事でも書きましたが、手のひら多汗症には症状によってグレードが決まっており、手術を受ける前の私はグレード2でした。

手掌多汗症グレード1

少し湿る程度。見た目には分からないが、触れると汗ばんでいるのが分かる。水滴ができる程ではないが、光を反射して汗がキラキラ光る。

手掌多汗症グレード2

水滴ができているのが見た目にもはっきりとわかる濡れている状態。だが汗が流れるところまではいかない。

手掌多汗症グレード3

水滴ができて、汗がしたたり落ちる。

胸腔鏡下交換神経遮断術の方法

ここには実際に私が受けたETS手術の手順が書いてあります。

手術は、後で述べる代償性発汗をいかに少なくし、手掌の汗を少なくするか(これなら我慢できる程度にするか)で方法が変わってきた。

  1. 全身麻酔、分離肺換気。
  2. 右の肺を縮こませる(左の肺だけで人工呼吸)。
  3. 右の腋の下から、内視鏡(カメラ)と電気メス・クリップ鉗子を胸腔内(胸の中)に挿入。
  4. 第4肋骨と第5肋骨上で交感神経幹を剥離・露出し、電気メスで焼灼切離。
  5. 気胸予防の為の細い管を残し、肺を再び膨らませる。
  6. 左側も右側と同様に手術する。
  7. 胸腔内に残した細い管を通して胸腔に残存した空気を吸引し、管を撤去する。

6番で「左側も右側と同様に手術する」とありますが、私の場合は恐らく「右側のみ」の切除だと思います。

正式な文章は見付けることができなかったのですが、

資料の裏に手書きで書いてあったものから、

かろうじて「片側のみ」という文章が読み取れました。

手術の成功率

かなり高い確率で、手のひらの汗を止めることには成功するようです。

95~98%程度、肺の癒着や切除する交感神経に接する血管が存在すると、手術が難しくなる。

  1. 手掌の汗の停止、十分な汗の減少は95~98%程度。
  2. 腋の下の汗は、約70%の人が普通の人並みか、それ以下のレベルに減少するが、発汗が完全に停止することはないので、未だ汗が残る場合は、他の治療法を併用する必要がある。
  3. 足底の汗は、約20%の人で減少するが、変わらないことが多い。
  4. 顔面の汗は、現象する場合と比較的保たれる(手術前と変わらない)場合がある。

私の場合は手術後、手のひらの汗は止まりましたが、腋の下と足裏は大量の汗をかきます。顔面の汗はあまり変化がないと思いますが。その代わりなのか辛味の強いものを食べると頭皮から大量に発汗します。

「胸腔鏡下交換神経遮断術の方法」の項にありましたように、「手術は、後で述べる代償性発汗をいかに少なくし、手掌の汗を少なくするか」を基準にして「手術の成功」とする場合、ひどい代償性発汗が発症した私の受けた手術は成功とは言えないのかもしれません

再発の問題

これはあまりないようですね、基本的に切断した神経は二度と繋がらないそうです。

十分に交感神経を焼灼切離できない場合や、切除した交感神経が伸びてきて再びつながると再発の可能性があるが、数%以下のようである。

手術中・術直後合併症

手術によって起こりうる症状がたくさん記載してあります。

痛み

喉の痛み(分離肺換気用チューブ)、背部痛(肋骨の上での手術操作、電気メス)、創部痛など。1ないし2日でほとんどが落ち着く。

呼吸困難感、胸部圧迫感

痛みで生じることが多く、十分な鎮静剤を使用する。

気胸

肺が十分に膨らまない状態、癒着があった場合などに生じる。この場合、ドレーンを胸腔内に入れ、持続吸引(脱気)することがあるが、2日以上になることはまれ。

上肢のしびれや脱力感

体位の影響、肋間神経への影響。

手の腫れぼったさ】

手掌への血流増加が原因。

ホルネル症状

まぶたが重くなる症状、第一交感神経節の遮断で出現する。

無気肺

気管支が痰で詰まり、肺が潰れてしまう。手術前の喫煙、節煙で予防する。

皮下気腫

気胸を生じた時に起こることがある。

血胸、血痰

胸腔鏡を胸に入れるとき、肺が癒着していたりすると肺を傷つけ出血することがある。

奇静脈

肋間動静脈からの出血。

大血管

胸管損傷。

その他

低血圧、徐脈、心停止。

これもお医者さんが患者に向けて書いた文章ではなく、ETS手術に詳しいお医者さんがETS手術に詳しくないお医者さんに向けて書いた文章に見えますね。

改めて言いますが、これは私(患者)が病院から説明資料として、手術前の説明の際に実際に手渡されたものに書いてある文章です。

術後合併症

ここでやっと代償性発汗のことが少し書かれます。

代償性発汗

70~100%に出現する(代償性発汗の防止の為に手術法が年々変化している。いろいろな工夫がなされている)。腹部、背部、大腿部に多い。

味覚性発汗

~25%に生じる、辛いものやすっぱいものを食べた時に生じる顔面発汗。

ホルネル症状

まぶたが重くなる現象。

脈拍・心拍の減少

かえってドキドキが止まる、極めてまれに不整脈。

手指の乾燥

冬場は、ハンドクリームは必需品。

自律神経の異常

激しい運動ができない、多くの場合2週間で元に戻る。

その他

手汗のしびれ、脱力感、胸のしびれと痛み(肋間神経痛)、鼻閉感、体熱感、頻尿、一過性に生じる手掌の汗の増加(手術後3~6日が多い)、泡疱、創部の感染。

70~100%の高い確率で発症する代償性発汗についての説明はこれだけです。

簡素ですね。

私が術後発症した合併症は、この中では代償性発汗のほかに、味覚性発汗(といっても私は顔面ではなく頭皮に汗をかきます)と頻尿が当てはまりました。

手術を受けるに当たっての注意点

もっとたくさんあってもいいと思うのですが、気をつける点はたったの2つだそうです。

  1. 甲状腺疾患や更年期障害で生じる多汗は、もともとの疾患の治療が優先されます。
  2. 術後の代償性発汗は、気温にかなり影響されるようです。できるだけ涼しい環境で生活されるように工夫が必要です。一般に顔に汗をかく方の代償性発汗は少ないようです。

よく読むと、このふたつはこれまでの文章とは違う雰囲気の書き方です。

お医者さんはETS手術後の患者からのクレームが相当嫌らしいので、対策として付け加えたのかもしれませんね。

術後長期の成績

これが最後です。

全体の約5%程度の患者さんで、手術後1年間以内に手掌の発汗が少し戻ってくることがあります。「以前のような激しい発汗はないが湿ることが多くなった」とか「約30%程度の発汗が戻ってきた」というふうに表現される人もいるようです。交感神経は再生能力の旺盛な組織ですから、術後長期にわたる手術成績にはなお不確定な要素があります。

これも「手術を受けるに当たっての注意点」の項を書いた人の文章っぽいです。

私の手のひらの発汗は術後10年経っても戻らないのですが、僅かにそういった人がいるんでしょうね。そのクレーム対策として書かれた文章のように思えます。

手術術式のシエーマ

おまけに、手術の同意書の半分に手書きで書かれた「手術式のシエーマ」という資料を公開します。

絵は上手ですね。

ただ、文字は本当に何を書いてあるのか分かりません。

手のひら多汗症で真剣に悩む患者に対して、本当に治したいと思って対応してくれるお医者さんであれば、こんな字で大切なことは書き残さないと思うんですけどね。

まとめ

私は物心がついた頃から約20年間を手のひら多汗症とともに過ごし、そのあまりの辛さから23歳になって胸腔鏡下交換神経遮断術(ETS手術)を受けました。

そして現在は、術後に発症した代償性発汗とともに10年間を過ごしています。

そんな私が今何を後悔しているのかというと、「手術前にしっかりとカウンセリングを受け、心の底から術後の副作用に納得したうえで手術を受ければ良かった」ということです。

自業自得なのですが、当時の私はとにかく手のひらの汗を止めたい一心で、ETS手術や代償性発汗についてろくに調べもせず、ポンポンポンと最初の受診から手術までをテンポ良く受けてしまいました。

代償性発汗の辛さを知った今だから言えるのですが、もっと自問自答すべきでした。

たしかに手術を受けることで手のひらの汗は止まりますし、そのおかげで手掌多汗症だった頃にはできなかったことがたくさんできるようになりました。

しかし代償性発汗を患うことで、逆にできないこともたくさん増えました。

どっちが正解、という部分に関して他人がとやかく言えることではないのですが、もしこのブログを読んでくれているあたなが手のひら多汗症で悩んでいて、ETS手術を近いうちに検討しているとしたら、私から間違いなく言えることは、

「なるべくたくさんの病院を受診してください」

「そしてたくさんのお医者さんと話してください」

「その中で本当に真剣に向き合ってくれるお医者さんを選んでください」

ということです。

私がETS手術を受けた1年後、手術してくれた病院に「代償性発汗が辛いんです、何か症状を緩和させる方法はないですか?」と藁をも掴む思いで相談しに行った時、当時手術を担当したお医者さんはなんて言ったと思います?

「だから代償性発汗は出ると言ったでしょう」

ですって。

おそらく術後のクレームが多過ぎて、私の相談も反射的にクレームだと思ったんでしょうね。

そんなお医者さん(病院)だったからかどうかは分かりませんが、私が手術を受けた数年後にその病院ではETS手術を行わないようになりました。

そんな病院で自分の一生を左右するETS手術を受けるのは避けたいですよね。

大変だとは思いますが、今はインターネット社会です。

たくさんの病院をネットで調べて、できるだけたくさん受診してください。そしてその中で、自分が心の底から信頼できる病院(お医者さん)を見付けましょう。

ETS手術は一生を左右する大きな決断を必要とします。

自分で頑張って探した信頼できる病院(お医者さん)と、できれば身近な親族などともたくさん話し合ったうえで、手術を受けるかどうかを決めましょう

「急いては事を仕損じる」という言葉があります。

これは「何事も焦ってやると失敗しがちだから、急ぐときほど落ち着いて行動せよ」という戒めの言葉です。

急いて手術を受けることを決めて、後々失敗したと後悔している私のようにだけはならないようにしてください。

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